はじめてのNISA・iDeCo:国の制度で始める賢い資産づくり
お金について学び始める際、「貯金だけでは将来が少し不安」「でも、お金を増やすって難しそう」と感じる方は少なくないかもしれません。特に20代前半の皆さんにとって、将来必要になるお金について考え始めるとき、何から手をつけて良いか迷うこともあるでしょう。
お金を「貯める」ことに加えて、「育てる」という視点を持つことは、将来の選択肢を広げるためにとても大切です。そして、国は皆さんの資産づくりを後押しするための、特別な税制優遇制度を用意しています。それが「NISA」と「iDeCo」です。
この記事では、NISAとiDeCoがどのような制度なのか、なぜ資産づくりに役立つのか、そして、はじめての方がどのようにこれらを活用できるのかを分かりやすく解説します。
なぜ「資産づくり」が必要なのでしょうか?
銀行にお金を預けておけば安全、という考え方だけでは、現代ではお金がなかなか増えません。その理由はいくつかあります。
- 物価の上昇(インフレ): 私たちが普段購入するモノやサービスの値段は、少しずつ上がっていく傾向があります。たとえば、これまで100円で買えたものが105円になる、といった具合です。もし銀行預金の金利が非常に低いままだと、たとえ金額は減らなくても、お金で買えるモノやサービスの量は実質的に減ってしまいます。これが「お金の価値が目減りする」ということです。
- 銀行預金の低金利: 現在の日本の銀行金利は非常に低いため、預けておくだけではほとんどお金が増えません。
こうした状況の中で、将来のためにお金を準備するには、お金自体にも少しずつ増えてもらう「資産づくり」の考え方が重要になります。
国の優遇制度「NISA」「iDeCo」とは?
資産づくりの方法の一つに「投資」がありますが、投資で得た利益には通常、税金がかかります。たとえば、投資した金融商品が値上がりして売却したり、配当金を受け取ったりして10万円の利益が出た場合、その利益に対して約20%の税金が差し引かれます。つまり、手元に残るのは8万円程度になってしまうのです。
しかし、NISAやiDeCoといった国の制度を利用して投資を行うと、この通常かかる税金が「非課税」、つまりゼロになります。これは、皆さんの資産づくりを応援するために設けられた特別な仕組みです。
以下の図は、通常の投資とNISA・iDeCoを利用した場合の税金の仕組みのイメージです。(※図やイラスト挿入箇所)
税金がかからないことで、投資で得た利益をそのまま再投資に回したり、将来のために蓄えたりすることができます。これは、長期的に見ると資産がより効率的に増えていくことにつながります。
NISA(ニーサ)とは?仕組みと特徴
NISAは「少額投資非課税制度」の愛称です。2024年から新しいNISA制度が始まり、より使いやすくなりました。
【NISAのポイント】
- 非課税期間が無期限: これまでのNISAと比べて、非課税で運用できる期間に期限がなくなりました。
- 年間投資枠が大きい: 年間で投資できる金額の上限が増え、より多くの資金を非課税で運用できるようになりました。年間最大360万円まで投資できます。
- 非課税保有限度額: 一人につき生涯で投資できる非課税の枠が決まっています(最大1,800万円まで)。
- いつでも引き出し可能: 必要になったらいつでも投資した資産を売却して、現金として引き出すことができます。
- 「つみたて投資枠」と「成長投資枠」: 投資方法によって枠が分かれています。「つみたて投資枠」は毎月コツコツ積み立てる長期・分散・積立投資に向いた商品が多く、「成長投資枠」は幅広い商品に投資できます。両方の枠を併用することも可能です。
【NISAのメリット】
- 投資で得た利益に税金がかからない。
- 非課税で投資できる期間がずっと続く。
- 年間投資枠と生涯の非課税枠が大きい。
- 必要に応じていつでも資産を引き出せるため、柔軟性が高い。
【NISAのデメリット】
- 元本保証ではありません。投資した資産の価値が下がる可能性もあります。
- 損をした場合、「損益通算」や「繰越控除」といった税金上の優遇措置は使えません。(※補足:損益通算とは、複数の投資の利益と損失を相殺すること。繰越控除とは、その年に引ききれなかった損失を翌年以降に持ち越して利益と相殺すること。)
【NISAはこんな人におすすめ】
- 将来のための資産づくりを始めたいが、資金をいつでも引き出せるようにしておきたい方。
- 投資初心者で、まずは少額からコツコツ積立投資を始めたい方。
- 比較的若い世代で、長期的な視点で非課税のメリットを最大限に活かしたい方。
iDeCo(イデコ)とは?仕組みと特徴
iDeCoは「個人型確定拠出年金」の愛称で、自分で掛金を出して運用し、その積立金と運用益を将来受け取る年金制度です。
【iDeCoのポイント】
- 3つの税制優遇: iDeCoは、運用益が非課税になるだけでなく、以下の3つの大きな税制優遇があります。
- 掛金が全額所得控除: 毎月積み立てる掛金が、その年の所得から差し引かれ、所得税や住民税が軽減されます。(※補足:所得控除とは、税金を計算する元となる所得金額を減らす仕組み。これにより税負担が軽くなります。)
- 運用益が非課税: NISAと同様に、運用で得た利益には税金がかかりません。
- 受け取る時にも控除: 積み立てた資産を将来受け取る際にも、一定額まで税金がかかりません。
- 原則60歳まで引き出せない: 積み立てた資産は、原則として60歳になるまで引き出すことができません。
- 掛金に上限がある: 毎月または毎年拠出できる掛金には上限が設けられており、加入者の職業などによって異なります。
【iDeCoのメリット】
- 運用益だけでなく、掛金や受け取り時にも税制優遇があり、大きな節税効果が期待できる。
- 長期的な視点で老後資金を準備するのに適している。
- 一度始めると原則引き出せないため、無理なく継続しやすい。
【iDeCoのデメリット】
- 原則60歳まで資産を引き出せないため、急な資金が必要になった場合に対応できない。
- 元本保証ではありません。
- 国民年金基金連合会や金融機関に支払う手数料がかかります。
- 掛金に上限があるため、多額の資金を一度に投資することはできません。
【iDeCoはこんな人におすすめ】
- 主に老後資金を形成したいと考えている方。
- 毎月の掛金を所得から差し引くことで、現在の税負担を軽減したい方。
- 手軽に引き出せない方が、コツコツ継続して積み立てられるという方。
NISAとiDeCo、違いは何?どっちを選ぶべき?
NISAとiDeCoは、どちらも国の税制優遇制度ですが、目的や仕組みに違いがあります。以下の表は、主な違いをまとめたものです。(※表挿入箇所を想定)
| 項目 | NISA | iDeCo | | :--------------- | :------------------------------------- | :-------------------------------------- | | 主な目的 | 幅広い資金の資産形成(目標は自由) | 老後資金の準備(自分自身の年金) | | 非課税対象 | 運用益 | 掛金、運用益、受け取り時 | | 資金の引き出し | いつでも可能 | 原則60歳まで不可 | | 掛金の拠出 | 年間の投資枠(最大360万円)内 | 上限あり(職業等による)、毎月/毎年 | | 加入対象 | 日本在住の18歳以上 | 国民年金の被保険者(原則20歳~65歳未満) | | 手数料 | 基本的に運用に関する手数料のみ | 加入・運用・給付等に関する手数料がかかる |
どちらを選ぶべきか迷う場合は、ご自身の「いつまでに何のためにお金を用意したいか」という目的や、資金の流動性(いつでも引き出せる必要性)を考えてみましょう。
- 近い将来も資金が必要になる可能性がある、柔軟に資金を使いたいという場合は、NISAが向いています。
- 主に老後資金を準備したい、毎月の掛金で税金を安くしたいという場合は、iDeCoが強力な味方になります。
もちろん、NISAとiDeCoは併用することも可能です。それぞれのメリットを活かして、計画的に資産づくりを進めることもできます。
はじめてのNISA・iDeCoの始め方ステップ
NISAやiDeCoをはじめて利用する場合も、ステップを踏めば難しくありません。
ステップ1:情報収集・学ぶ まずはこの記事のように、制度について理解を深めることから始めます。ご自身の目的や状況にどちらが合っているか検討しましょう。
ステップ2:制度を選ぶ NISAにするか、iDeCoにするか、あるいは両方併用するかを決めます。
ステップ3:金融機関を選ぶ NISAやiDeCoは、銀行や証券会社などの金融機関を通じて始めます。金融機関によって取り扱っている商品や手数料、サービスが異なるため、比較検討して選びましょう。オンライン証券会社は手数料が低い傾向があります。
ステップ4:申し込み手続き 選んだ金融機関で、NISA口座またはiDeCo口座の開設手続きを行います。マイナンバーカードなどの本人確認書類が必要になります。iDeCoの場合は、勤務先に手続きを依頼する場合もあります。
ステップ5:投資対象を選ぶ 口座開設後、実際にどのような金融商品に投資するかを選びます。投資信託などが一般的です。商品の特徴やリスクを理解した上で選びましょう。最初は「つみたて投資枠」で、分散された投資信託を選ぶのがおすすめです。
ステップ6:積立設定をする 毎月(または指定した頻度で)いくらを投資するか、積立金額を設定します。無理のない金額から始めることが大切です。多くの金融機関で、毎月数千円といった少額から積立が可能です。
まとめ:少額からでも、国の制度を活用して賢い資産づくりを始めましょう
NISAやiDeCoは、特に若い世代の皆さんにとって、将来の資産づくりを有利に進めるための強力なツールです。難しいと感じるかもしれませんが、仕組みを理解し、少額からでも良いので早めに始めることで、非課税のメリットを最大限に活かすことができます。
完璧なタイミングや方法を待つよりも、まずは「はじめての一歩」を踏み出すことが大切です。この記事で得た知識を参考に、ご自身の将来に向けた賢い資産づくりを検討してみてください。