はじめてのお金の教科書

はじめての給与明細:税金と社会保険の超基本

Tags: 給与明細, 税金, 社会保険, 新社会人, お金の基本

新生活が始まり、初めてのお給料を受け取って、給与明細を見たときに「あれ?思ったより手取りが少ないな…」と感じたことはありませんか?特に新社会人の方は、総支給額と実際に振り込まれる金額(手取り)との差に驚くかもしれません。

この差額は、主に「税金」と「社会保険料」が差し引かれているためです。これらは、私たちが安心して暮らすための社会の仕組みを支えるために、とても大切な役割を果たしています。

この記事では、新社会人や、これから働くことを考えている学生の皆さんに向けて、給与明細から引かれる税金と社会保険について、その超基本的な仕組みを分かりやすく解説していきます。なぜお金が引かれるのかを知ることは、お金との付き合い方を考える上で最初の、そして重要な一歩となるでしょう。

給与明細の基本構造を知る

まずは、給与明細がどのような情報で構成されているかを見てみましょう。多くの給与明細は、大きく分けて以下の項目で構成されています。

  1. 勤怠: 働いた日数や時間などが記載されます。
  2. 支給: 基本給や残業代、各種手当など、会社から支払われるお金の合計額(総支給額)が記載されます。
  3. 控除: 支給額から差し引かれるお金、つまり税金や社会保険料などが記載されます。
  4. 差引支給額: 支給総額から控除合計額を差し引いた、実際に銀行口座に振り込まれる金額(手取り額)が記載されます。

今回注目するのは「控除」の項目です。ここに記載されている項目が、給与から差し引かれている主なものとなります。

給与から引かれる税金の種類

給与から差し引かれる税金は、主に「所得税」と「住民税」の2種類です。

所得税

所得税は、個人の「所得」、つまり収入から必要経費などを差し引いた儲けに対してかかる国の税金です。会社から給与をもらっている場合、会社が給与を支払う際に、国に納めるべき所得税をあらかじめ計算して差し引きます。これを「源泉徴収(げんせんちょうしゅう)」といいます。

所得税の金額は、その年の所得額によって税率が変わる「累進課税(るいしんかぜい)」という方式がとられています。所得が多いほど、税率が高くなる仕組みです。また、家族構成や生命保険料の支払いなどに応じて、税金計算の元となる所得から一定額を差し引くことができる「所得控除(しょとくこうじょ)」という制度もあります。

1年間の所得税の合計額は、年末に会社が行う「年末調整(ねんまつちょうせい)」や、自分で税務署に行って行う「確定申告(かくていしんこく)」で最終的に確定し、源泉徴収された金額との差額が調整されます。新社会人の最初の1年目は、所得税が少なく、年末調整で還付(払いすぎた税金が戻ってくること)されるケースが多く見られます。

住民税

住民税は、住んでいる都道府県と市区町村に納める税金です。地域社会の費用(教育、福祉、道路整備など)をまかなうために使われます。

住民税は、原則として「前年の所得」に対して計算されます。そのため、新社会人として働き始めた最初の1年間は、前年にほとんど所得がなかったため、住民税は引かれません。働き始めて2年目の6月から、前年1年間の所得に基づいた住民税の徴収が始まります。このため、2年目の6月以降は手取り額が少し減ることを知っておくと良いでしょう。

住民税も、会社員の場合は会社の給与から差し引かれて納める「特別徴収(とくべつちょうしゅう)」という方法が一般的です。

給与から引かれる社会保険料の種類

給与から差し引かれる社会保険料は、主に以下の種類があります。これらは病気や怪我、失業、老齢など、様々なリスクに備えるための保険制度です。原則として、会社と従業員が保険料を半分ずつ負担します(雇用保険は負担割合が異なります)。

健康保険

病気や怪我をしたときに、医療費の自己負担を抑えるための保険です。健康保険証を医療機関の窓口で提示することで、通常3割(年齢による)の自己負担で医療サービスを受けることができます。保険料は、加入している健康保険組合などによって異なります。

厚生年金保険

現役世代が高齢者の生活を支え、将来自分が高齢者になったときに年金を受け取るための制度です。保険料は、将来受け取る年金額にも影響します。国民年金は日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入しますが、会社員は厚生年金保険に加入し、国民年金分も含まれる形になります。

雇用保険

労働者が失業した場合に、次の仕事が見つかるまでの生活を支えるための給付(失業給付など)を行う保険です。また、育児休業や介護休業中の給付なども行われます。保険料は、従業員と会社で負担割合が異なります。

介護保険

原則として40歳以上の人が加入する保険で、介護が必要になったときに介護サービスを受けるための費用を一部負担する制度です。20代前半の皆さんは、まだ加入対象ではありませんので、給与から差し引かれることはありません。

手取り額の目安について

給与明細の「差引支給額」、つまり手取り額は、総支給額から税金と社会保険料の合計額を差し引いた金額です。

差し引かれる金額は、総支給額や所得控除、お住まいの地域などによって変動しますが、一般的に総支給額の約15%~25%程度が税金と社会保険料として差し引かれることが多いと言われています。もちろんこれはあくまで目安であり、人によって大きく異なります。

給与明細をよく見て、自分がどれくらいの税金や社会保険料を納めているのかを確認してみましょう。

なぜ税金や社会保険料が引かれるのか?

税金や社会保険料は、単に給与が減る「差し引かれるお金」ではありません。これらは、私たちが安心して社会生活を送るための、いわば「会費」のようなものです。

納められた税金は、教育、医療、福祉、警察、消防、公共事業など、様々な公共サービスに使われます。社会保険料は、病気や怪我をしたときの医療、老後の生活、失業時の生活保障など、いざという時に自分や家族、そして社会全体を支えるための財源となります。

これらの制度があるからこそ、私たちは安心して医療を受けられたり、老後に公的な年金を受け取れたり、失業しても一時的に生活が保障されたりするのです。

まとめ:給与明細への理解が、お金の管理の第一歩

初めての給与明細を見て戸惑うのは、多くの人が経験することです。しかし、そこに記載されている税金や社会保険料が、私たちの社会生活を支えるためにどのような役割を果たしているのかを理解することは、とても大切です。

給与明細の控除項目を理解することは、自分の収入がどのように構成されているかを知ることであり、それは家計管理や将来設計を考える上での基盤となります。今回ご紹介した内容は基本的な部分ですが、ここから税金や社会保険に対する理解を深め、自分のお金を賢く管理するための一歩を踏み出していただければ幸いです。

今後の記事では、年末調整や確定申告、iDeCoやNISAといった資産形成と税金の関係など、さらに詳しい情報も解説していく予定です。