はじめての手取り収入:賢く使うための基本
新生活が始まり、お仕事を始めた皆さま。初めての給与明細を見て、「あれ?思っていた金額と違うな?」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。これは、「額面収入」と「手取り収入」の違いによるものです。
手取り収入とは?額面との違い
まず、「額面収入」とは、会社から提示された給与の総支給額のことです。基本給に残業代や各種手当などが加算された、いわば「稼いだお金の合計」です。
これに対し、「手取り収入」とは、額面収入から税金や社会保険料などが差し引かれた後に、実際に皆さまの銀行口座に振り込まれる金額のことを指します。一般的には、額面収入の約75%〜85%程度になると言われています。
差し引かれる主なものは以下の通りです。
- 税金: 所得税、住民税
- 社会保険料: 健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料
これらの税金や社会保険料は、国の制度やサービスを維持するために必要な費用であり、会社が皆さまに代わって国や自治体に納付してくれています。
なぜ手取り収入の管理が重要なのか
実際に使えるお金である手取り収入をどのように使うかは、皆さまの現在の生活だけでなく、将来の安定にも大きく関わってきます。
なんとなくお金を使ってしまい、月末に苦しくなる、貯金が全くできない、将来への漠然とした不安が消えない、といった状況に陥らないためには、手取り収入を計画的に管理することが大切です。
では、具体的にどのようにすれば手取り収入を賢く使えるようになるのでしょうか。基本的なステップをご紹介します。
手取り収入を賢く使うための基本的なステップ
手取り収入を上手に管理し、賢く使うためには、以下のステップで進めることをおすすめします。
ステップ1:自分の手取り額を正確に把握する
まずは、毎月の給与明細を確認し、実際に振り込まれる「差引支給額」を確認しましょう。これが皆さまの「手取り収入」です。金額だけでなく、何がいくら引かれているのかも見ておくと、お金の流れがより理解できるようになります。(給与明細の見方については、「はじめての給与明細:税金と社会保険の超基本」の記事もご参照ください。)
ステップ2:現在の支出を把握する
次に、自分が毎月何にどれくらいお金を使っているかを把握します。家賃や水道光熱費、通信費などの毎月ほぼ決まった金額が出ていく「固定費」と、食費や交際費、娯楽費などの月によって変動する「変動費」に分けて考えてみると分かりやすいでしょう。
手書きの家計簿でも良いですし、最近ではスマートフォンで簡単に収入と支出を記録できる家計簿アプリもたくさんあります。(家計管理については、「はじめてのスマホ家計管理:アプリで収入と支出を把握しよう」の記事もご参照ください。)まずは1〜2ヶ月、正直に記録してみることが第一歩です。
以下の図のように、支出を分類して整理すると、お金の流れが見えやすくなります。
(図:支出の分類例 - 固定費と変動費)
ステップ3:収入と支出のバランスを確認する
ステップ1で把握した手取り収入と、ステップ2で把握した支出を比較してみましょう。
- 手取り収入 > 支出: 収入が支出を上回っており、貯金などに回せる余裕がある状態です。
- 手取り収入 = 支出: 収入の範囲内で生活できていますが、余裕がない状態です。
- 手取り収入 < 支出: 収入よりも支出が多く、赤字になっている状態です。
もし支出が収入を上回っている場合や、思ったより貯金に回せていない場合は、どこにお金を使いすぎているのか、無駄な支出はないかを見直す必要があります。
ステップ4:使い道の優先順位を決める
収入と支出のバランスが把握できたら、次にお金を何のために使うか、優先順位を考えてみましょう。
生活に必要なもの(家賃、食費、水道光熱費など)はもちろん最優先ですが、将来のための貯金、自己投資(スキルアップのための勉強や書籍代)、そして趣味や交際費なども、人生を豊かにするために必要な支出です。
漠然と使うのではなく、「今月は〇〇にいくらまで使おう」「将来のために△△円貯金しよう」のように、意識的に配分を考えることが大切です。
ステップ5:具体的な予算計画を立てる
優先順位に基づいて、手取り収入の中で各項目にどれくらいの金額を割り当てるか、具体的な「予算」を立ててみましょう。(予算管理の詳しい方法については、「はじめての予算管理:計画的にお金を使う方法」の記事もご参照ください。)
例えば、手取りが20万円なら、
- 家賃:7万円
- 食費:3万円
- 水道光熱費・通信費:1.5万円
- 交際費・娯楽費:3万円
- 自己投資:1万円
- 貯金:3万円
- その他(予備費など):0.5万円
のように、項目ごとに上限額を設定します。これはあくまで一例です。皆さまのライフスタイルや価値観に合わせて自由に設定してください。重要なのは、立てた予算の中でやりくりすることを意識することです。
ステップ6:計画に従って実行し、定期的に見直す
予算計画を立てたら、それに従って実際にお金を使ってみましょう。そして、1ヶ月など定期的に計画通りに使えているかを確認し、必要であれば計画を見直します。
最初のうちは予算通りにいかないこともあるかもしれませんが、それは自然なことです。試行錯誤を重ねる中で、自分にとって無理のない、継続できるお金の使い方が見つかるはずです。
賢く手取り収入を使うためのヒント
- 「先取り貯金」を実践する: 給料が入ったらすぐに一定額を貯金用口座に移す「先取り貯金」は、確実にお金を貯めるための有効な方法です。会社の財形貯蓄制度や、銀行の自動積立定期預金などを活用すると、手間なく自動的に貯金できます。
- 緊急予備資金を用意する: 病気や冠婚葬祭など、予期せぬ大きな支出に備えて、すぐに引き出せる緊急予備資金があると安心です。目安としては、生活費の3ヶ月~半年分程度と言われています。(緊急資金については、「もしもの備え:はじめての緊急資金の作り方」の記事もご参照ください。)
- 漠然とした不安を具体化する: 「将来が不安」という気持ちの背景には、「いつまでにいくら貯めたい」といった具体的な目標がないからかもしれません。ライフイベント(例:〇年後に引っ越し、〇年後に留学など)や将来の夢に必要な資金を考えると、お金を使う目的が明確になり、節約や貯金へのモチベーションにつながります。(目標設定やライフプランについては、「はじめてのお金の目標設定:なぜ必要で、どう始める?」「はじめてのライフプラン:将来を考えるお金の計画」の記事もご参照ください。)
まとめ
手取り収入を賢く使うことは、難しいことではありません。まずは「自分の手取り額を知る」「何に使っているか記録する」といった小さな一歩から始めてみましょう。
お金の流れを把握し、自分にとって大切なものに優先順位をつけて使うことで、無駄遣いを減らし、将来のための貯金もできるようになります。計画的に手取り収入を管理することは、皆さまの生活に安心感とゆとりをもたらしてくれるはずです。今日からぜひ、手取り収入と向き合ってみてください。