はじめての保険:なぜ必要?種類と選び方の基本
お金について考え始める際、貯金や投資といった「増やす」「備える」といった側面に目が向きがちです。しかし、予測できないリスクに備えることも、お金の管理において非常に重要です。そのための手段の一つが「保険」です。
「保険」と聞くと、難しそう、自分にはまだ関係ない、と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、病気やケガ、あるいは万が一のことがあった場合、私たちの生活や将来の計画に大きな影響を与える可能性があります。この記事では、これから保険について考え始める方に向けて、なぜ保険が必要なのか、どのような種類があるのか、そしてどのように選べばよいのか、その基本的な考え方を分かりやすく解説します。
保険とは何ですか?基本的な仕組み
保険は、簡単に言うと「助け合いの仕組み」です。多くの人が少しずつお金(これを「保険料」と呼びます)を出し合い、集まったお金の中から、病気や事故などで困った人にお金(これを「保険金」や「給付金」と呼びます)を支払う制度です。
自分一人で万が一の事態に備えるには、とても大きな金額が必要になる可能性があります。しかし、保険の仕組みを利用すれば、日頃から少額の保険料を支払うことで、もしもの時にまとまったお金を受け取ることができます。これは、多くの人でリスクを分かち合う「相互扶助」の考え方に基づいています。以下の図は、この相互扶助の仕組みを分かりやすく示したものです(※図はイメージです)。
なぜ保険が必要なのでしょうか?リスクに備えるということ
私たちは、日常生活を送る上で様々なリスクに直面する可能性があります。その中でも、お金に関するリスクとして特に考えられるのが、以下の二つです。
- 病気やケガで医療費がかかるリスク: 突然の病気やケガで入院したり手術を受けたりすると、予想外に高額な医療費がかかることがあります。
- 万が一のことがあった場合の収入減や生活費のリスク: 自分に万が一のことがあった場合、残された家族の生活費や教育費などが不足する可能性があります。また、自分が病気やケガで長期間働けなくなった場合に、収入が途絶えてしまうリスクも考えられます。
これらのリスクに対して、どれだけ自分自身で備えられているかを考えることが、保険を検討する第一歩となります。
主な保険の種類を知りましょう
保険には非常にたくさんの種類がありますが、個人の生活に関わる基本的なものとして、ここでは代表的なものをいくつかご紹介します。
生命保険(死亡保険)
生命保険は、被保険者(保険の対象となる人)が死亡または高度障害状態になった場合に、あらかじめ決められた保険金が支払われる保険です。この保険金は、残された家族の生活費や子供の教育費などに充てられることを想定しています。自分が一家の大黒柱である場合や、将来的に養う家族が増える可能性がある場合に検討することが多い保険です。
医療保険
医療保険は、病気やケガで入院したり手術を受けたりした場合に、入院日数や手術の種類に応じて給付金が支払われる保険です。公的な健康保険制度があるため医療費の自己負担は抑えられますが、差額ベッド代や先進医療、入院中の食費、交通費など、健康保険ではカバーされない費用も多く発生します。医療保険は、これらの自己負担分やその他の費用を補うために利用されます。
(補足)就業不能保険・所得補償保険
病気やケガで長期間働けなくなった場合に、その間の収入減少を補うための保険です。給与のように毎月決まった金額を受け取れるタイプなどがあります。貯蓄が十分でない場合や、会社からの休業補償などが限定的な場合に、生活を維持するために検討されることがあります。
保険を選ぶ上での基本的な考え方
闇雲に保険に加入するのではなく、いくつかのステップを踏んで自分に合った保険を検討することが大切です。
ステップ1:どんなリスクに備えたいかを考える
まずは、自分自身の状況を振り返り、どんなリスクに対して特に不安を感じるかを考えてみましょう。 * もし病気やケガで入院したら、医療費がいくらくらいかかるか心配ですか? * もし自分が働けなくなったら、その間の生活費はどうなりますか? * 将来、結婚して家族を持ったときに、自分に万が一のことがあった場合の家族の生活が心配ですか?
今の自分にとって、最も避けたい、あるいは備えておきたいリスクは何かを明確にすることが出発点です。
ステップ2:公的な保障を知る
日本には、国民全員が加入する公的な保険制度があります。代表的なものに「健康保険」や「公的年金保険」があります。 * 健康保険: 病気やケガをしたとき、医療費の自己負担が原則3割になります。また、病気やケガで会社を休んだ場合に、条件を満たせば「傷病手当金」が受け取れる制度もあります。 * 公的年金保険: 国民年金や厚生年金などがあり、老後の生活費の他、加入者が障害状態になった場合の「障害年金」や、加入者が亡くなった場合に残された家族が受け取れる「遺族年金」といった保障もあります。
民間の保険を検討する前に、これらの公的な保障でどこまでカバーされるのかを知ることが重要です。公的な保障だけでも、多くの場合、ある程度のリスクには対応できる仕組みがあります。以下の図は、様々なリスクに対して、公的な保障と民間の保険がどのように位置づけられるかのイメージです(※図はイメージです)。
ステップ3:不足する部分を民間の保険で補うか検討する
公的な保障でカバーされる範囲を確認した上で、「それでもこのリスクについては備えが足りないかもしれない」と感じる部分があれば、民間の保険で補うことを検討します。 例えば、 * 健康保険の自己負担分やその他の諸費用が心配なら → 医療保険を検討 * 自分が亡くなった場合に残された家族の生活費が心配なら → 生命保険を検討 * 病気やケガで長期間働けなくなった場合の収入減が心配なら → 就業不能保険などを検討
このように、自分にとって「必要な保障額」は、公的な保障で得られる金額と、実際に必要になるであろう金額との差額として考えることができます。
ステップ4:複数の保険商品を比較検討する
備えたいリスクと必要な保障額の目安が定まったら、それに合う保険商品を具体的に探します。同じような保障内容でも、保険会社や商品によって保険料や細かな条件が異なります。 比較検討する際には、以下の点をチェックしましょう。 * 保険料: 毎月または毎年いくら支払う必要があるか。無理なく払い続けられる金額か。 * 保障内容: どのような場合に、いくらの保険金や給付金が支払われるのか。支払い条件は分かりやすいか。 * 保険期間: いつまで保障が続くのか。終身(一生涯)なのか、一定期間(例:10年、〇歳まで)なのか。 * 特約: 基本の保障に加えて、どのようなオプション(特約)があるか。それは本当に自分に必要か。
複数の商品を比較検討することで、自分にとって最もバランスの良い保険を見つけることができるでしょう。
若い世代の保険の考え方
20代前半の時点では、扶養する家族がいない、または若くて健康であるため、死亡保険の必要性は低いと感じる方が多いかもしれません。また、医療保険についても、公的な健康保険と貯蓄である程度対応できる場合もあります。
重要なのは、周りの人が入っているから、勧められたから、といった理由だけで安易に保険に加入しないことです。まずは自分の状況、家族構成、貯蓄などを冷静に把握し、公的な保障を知った上で、「自分にとって本当に必要な保障は何か」「どれだけなら保険料を無理なく支払えるか」をじっくり考えることから始めてください。必要以上に手厚い保障に入りすぎると、保険料の支払いが家計の負担になる「保険貧乏」になってしまう可能性もあります。
まとめ:自分に合った保険を考える第一歩
保険は、予測できないリスクに備えるための大切なツールです。しかし、その必要性や内容は人によって大きく異なります。
この記事で解説したように、まずは「どんなリスクに備えたいか」を考え、「公的な保障でどこまでカバーされるか」を知り、その上で「民間の保険で何を、どれだけ補う必要があるか」を検討するというステップが、自分に合った保険を見つけるための基本的な考え方です。
すぐに保険に加入する必要はありません。まずは自分の状況を整理し、公的な保障について少し調べてみることから始めてみましょう。将来の漠然とした不安を具体的に捉え、それに対してどう備えるかを考えることが、賢いお金との付き合い方につながります。