もしもの備え:はじめての緊急資金の作り方
お金に関する不安の一つに、「もしも」のときにどうすれば良いのか分からない、ということがあるかもしれません。予期せぬ出来事でお金が必要になったとき、準備があるとないとでは心の余裕が大きく変わります。ここでは、そういった「もしも」に備えるための「緊急資金」について、その考え方や作り方の基本をお伝えします。
緊急資金とは?なぜ必要なのでしょうか?
緊急資金とは、文字通り、急に必要になったお金に備えておくための資金です。例えば、次のような状況が考えられます。
- 病気や怪我で急な医療費がかかる
- 勤めている会社が倒産してしまい、収入が途絶える
- 身の回りの家電が壊れてしまい、買い替えが必要になる
- 身内の不幸など、急な冠婚葬祭の費用が発生する
- 事故などで車や家屋に損害が発生する
こうした予期せぬ出来事は、いつ起こるか分かりません。緊急資金がないと、必要なお金を借りる必要が出てきたり、せっかく貯めた別の目的の貯金(例えば旅行資金や車の購入資金)を取り崩さなければならなくなったりする可能性があります。緊急資金を備えておくことは、このような事態でも落ち着いて対処し、生活を守るためにとても大切なのです。将来に対する漠然とした不安を減らし、安心感を持って過ごすためにも役立ちます。
いくら備えておくのが良いのでしょうか?
緊急資金としていくらあれば安心できるかは、その方の状況によって異なります。一般的には、「生活費の3ヶ月分から6ヶ月分」を目安にすると良いと言われています。
ここでいう「生活費」とは、毎月生活していくために最低限必要なお金のことです。家賃(住宅ローンの返済)、食費、水道光熱費、通信費、保険料、交通費など、必ずかかる費用を合計した金額です。普段の娯楽費や趣味に使うお金などは含めず、あくまで「生きていくために最低限必要なお金」と考えてみてください。
例えば、毎月の最低限の生活費が15万円だとします。その場合、緊急資金の目安は
- 15万円 × 3ヶ月分 = 45万円
- 15万円 × 6ヶ月分 = 90万円
となります。
なぜ3ヶ月〜6ヶ月分なのでしょうか。これは、もし失業してしまっても、新しい仕事が見つかるまでの期間や、公的な支援を受けられるまでの期間を考慮しているためです。会社員であれば、退職後すぐに失業保険(雇用保険の基本手当)を受給できるわけではありませんし、金額も直前の給与から計算されます。自営業やフリーランスの方であれば、収入が途絶えた場合の準備はより重要になるかもしれません。
また、実家暮らしなのか一人暮らしなのか、扶養する家族がいるのかなど、生活環境によっても必要な金額は変わってきます。まずは、ご自身の毎月の最低限の生活費がいくらになるのかを把握し、そこから現実的な目標額を設定してみましょう。最初は3ヶ月分を目指し、徐々に6ヶ月分へと増やしていく、といった段階的な目標設定もおすすめです。
どうやって緊急資金を作るのでしょうか?
緊急資金の必要額が分かったら、次は実際に貯める方法を考えましょう。いくつかステップをご紹介します。
ステップ1:毎月の収入と支出を把握する
まずは、ご自身の家計の状況を正確に把握することがスタート地点です。収入はいくらあり、何にいくら使っているのかを確認します。「はじめてのスマホ家計管理」や「家計を見直す第一歩:固定費と変動費を知ろう」といった記事も参考に、まずは現状を「見える化」することから始めましょう。
ステップ2:緊急資金の目標額と期限を設定する
「生活費の〇ヶ月分=〇〇円」のように、具体的な目標額を決めます。そして、「〇年後の〇月までに貯める」といった期限を設定することで、より計画的に取り組むことができます。
ステップ3:家計を見直して「貯めるお金」を生み出す
収入から緊急資金の目標額を貯めるには、支出を見直す必要があるかもしれません。無駄遣いはないか、節約できる部分はないかを探します。固定費(家賃、通信費、保険料など毎月決まってかかるお金)を見直すことは、節約の効果が大きいことが多いです。変動費(食費、娯楽費など月によって変わるお金)についても、予算を決めて管理するなど工夫できます。
ステップ4:貯める仕組みを作る(先取り貯金など)
貯金を成功させるには、「残ったお金を貯める」のではなく、「まず貯める分を確保してから残りで生活する」という「先取り貯金」が効果的です。給料が入ったらすぐに、緊急資金として設定した金額を別の口座に移すなどの仕組みを作りましょう。自動積立サービスなどを利用すると、手間なく続けることができます。
- 図やイラスト挿入の想定: 給料が入ってから支出に使われるお金と、まず貯金に回されるお金の流れを比較する図があると分かりやすいかもしれません。
ステップ5:緊急資金用の口座を用意する
貯めているお金を他の用途でうっかり使ってしまわないように、緊急資金専用の口座を用意することをおすすめします。普段使いの口座とは別の銀行口座に預けたり、同じ銀行でも目的別の口座(ネット銀行などに多いサービス)を利用したりすると良いでしょう。
- 図やイラスト挿入の想定: 普段使いの口座と緊急資金用口座を分けるイメージ図があると視覚的に理解しやすいです。
緊急資金はどこに置いておくのが良いのでしょうか?
緊急資金は、「いざという時にすぐに引き出せる」ことが非常に重要です。そのため、基本的には安全性が高く、流動性(いつでも現金化できること)が高い方法で保有します。
- 普通預金口座: 最も一般的な方法です。すぐに引き出しが必要な緊急時には便利です。可能であれば、普段生活費を出し入れしている口座とは別の口座に預けておくと、目的を混同せず管理しやすくなります。
- ネット銀行の普通預金: 実店舗のある銀行よりも金利が高い傾向にあります。ATMや振込手数料が無料になる条件がある場合もあり、少しでも有利に貯めたい場合に検討できます。
- 定期預金: 普通預金より金利が高いですが、原則として満期まで引き出せません。急な出費に対応できない可能性があるため、緊急資金としてはあまり向きません。ただし、目標額の一部を少し高めの金利の短期間(例えば3ヶ月や6ヶ月)の定期預金に預けるという考え方もありますが、まずはすぐに引き出せる普通預金で目標額を貯めることから始めるのがおすすめです。
株式や投資信託など、価値が変動する可能性のある金融商品で緊急資金を保有するのは避けてください。もしもの時に必要になったタイミングで、価格が下がっているリスクがあるためです。緊急資金は「増やすこと」よりも「必要な時に確実に使えること」を最優先に考えるお金です。
まとめ
緊急資金は、人生の予期せぬ出来事から自分自身と大切な人を守るための、いわば「お金の保険」のようなものです。すぐに目標額を貯めるのは難しく感じるかもしれませんが、まずは毎月の生活費を把握し、小さな金額からでも良いので貯め始めることが第一歩です。
緊急資金があるという安心感は、日々の生活の質を高め、将来の計画を立てる上でも大きな支えとなります。この記事をきっかけに、ご自身の緊急資金について考え、少しずつ準備を進めていただけたら嬉しく思います。