お金の基本:収入と支出を把握する第一歩
はじめに:なぜ収入と支出の把握が大切なのか
お金に関する知識を身につけることは、将来の選択肢を広げ、日々の生活に安心感をもたらす上で非常に重要です。特に、これから経済的に自立していく20代の皆さんにとって、お金との向き合い方は人生の基礎となります。
お金の管理と聞くと難しく感じるかもしれませんが、まずはご自身のお金が「いくら入ってきて」「いくら出ていくのか」を把握することから始めるのが、最も基本的な第一歩です。これを収入と支出の把握と言います。
収入と支出を正確に把握することで、漠然としたお金の不安を減らし、お金をコントロールしているという感覚を持つことができます。この記事では、収入と支出の基本を理解し、ご自身のお金の流れを把握するための具体的なステップをご紹介します。
収入とは何かを理解する
収入とは、文字通り自分に入ってくるお金のことです。働くことで得る給与やアルバイト代、親からの仕送り、奨学金なども収入に含まれます。
ここで知っておきたいのが、「額面収入(がくめんしゅうにゅう)」と「手取り収入(てどりしゅうにゅう)」の違いです。
- 額面収入: 会社やアルバイト先との契約で決められた、税金や社会保険料などが差し引かれる前の総支給額のことです。
- 手取り収入: 額面収入から、所得税や住民税、健康保険料、厚生年金保険料(会社員の場合)などが差し引かれた後、実際に自分の手元に入ってくる金額のことです。
実際に自分が使えるお金は「手取り収入」ですので、家計を管理する上ではこの手取り収入を基準に考えることが重要です。
支出とは何かを理解する
支出とは、自分から出ていくお金のことです。日常生活で使うお金はすべて支出にあたります。支出は、その性質によって大きく二つに分けられます。
-
固定費(こていひ): 毎月ほぼ一定額がかかる支出です。
- 例:家賃、通信費(スマホ代、インターネット代)、サブスクリプションサービス利用料(動画配信サービス、音楽配信サービスなど)、保険料など
-
変動費(へんどうひ): 月によって金額が変わる支出です。
- 例:食費、水道光熱費(使用量によって変動)、交通費、交際費、趣味・娯楽費、被服費など
固定費は一度見直しをすれば継続的に支出を抑える効果が期待できますが、変動費は日々の意識や工夫が節約につながります。このように支出を分類して考えることで、どこにお金を使っているのかが見えやすくなります。
収入と支出のバランスを考える
お金の管理の基本は、収入 > 支出 の状態を維持することです。つまり、入ってくるお金よりも出ていくお金を少なくするということです。この差額が、貯金や将来のための投資に回せるお金になります。
収入と支出が把握できていないと、無意識のうちに収入よりも多くのお金を使ってしまい、結果として「お金がない」という状況に陥りやすくなります。これが、多くの人が抱えるお金に関する漠然とした不安の根本原因の一つです。
収入と支出を正確に把握することは、このバランスが取れているかを確認し、必要であれば改善するためのスタート地点となります。
収入と支出を把握する具体的なステップ
では、実際にどのようにして収入と支出を把握すれば良いのでしょうか。難しいことはありません。まずは以下のステップで始めてみましょう。
ステップ1:収入を記録する
毎月、またはお金が入ってくるたびに、その金額を手取り額で記録します。給与明細や通帳の入金記録などを確認してください。アルバイトの場合は、シフトや時給から計算した予想額でも構いません。
ステップ2:支出を記録する
日々の支出を記録します。最初はすべての支出を細かく記録するのが難しければ、大きな金額のものや、よく利用するお店での支出から始めてみましょう。記録する方法はいくつかあります。
- ノートやメモ: 手軽に始められます。レシートを貼るだけでも良いでしょう。
- 家計簿アプリ: スマートフォンで簡単に記録でき、集計も自動で行ってくれる便利なツールがたくさんあります。
- 表計算ソフト(ExcelやGoogle Sheetsなど): パソコンが得意な方なら、自分で項目をカスタマイズして管理できます。
ご自身にとって続けやすい方法を選ぶことが大切です。下の図は、家計簿アプリを使った記録画面のイメージを示しています。(※ここでは図は表示されません。)
ステップ3:一定期間で集計する
1週間ごと、または1ヶ月ごとなど、期間を決めて収入と支出を集計します。家計簿アプリや表計算ソフトを使っている場合は、自動で集計されることが多いです。ノートの場合は、手計算や電卓を使って合計を出してみましょう。
ステップ4:収入と支出の差(収支)を確認する
集計した収入の合計額から、支出の合計額を差し引いて、収支を計算します。
収入合計額 - 支出合計額 = 収支
この収支がプラスであれば、その期間はお金が残ったことになります。マイナスであれば、収入以上にお金を使ったことになります。
ステップ5:結果を見て改善点を考える
集計結果を振り返ります。
- 収支はプラスでしたか、マイナスでしたか?
- どのような項目に多くお金を使いましたか?(例:食費、交際費、趣味など)
- 予想外にお金がかかった項目はありましたか?
このように数字を見ることで、自分のお金の使い方に気づきが生まれます。「今月は外食が多かったな」「思っていたより通信費が高いな」など、具体的な発見があるはずです。この気づきが、今後の家計管理や節約のヒントになります。
収入と支出を把握することのメリット
収入と支出を把握することは、単にお金の出入りを記録するだけではありません。次のようなメリットがあります。
- お金の使い道が明確になる: どこにどれくらいお金を使っているのかが分かり、無駄遣いに気づきやすくなります。
- 貯金ができるようになる: 収支をプラスにする意識が芽生え、計画的に貯金に取り組めるようになります。
- 将来の見通しが立てやすくなる: 自分のお金の流れを把握できれば、将来かかるであろう費用(進学費用、車の購入、結婚資金など)に対して、どのくらいのペースで貯めれば良いかなどの計画が立てやすくなります。
- お金に関する不安が減る: お金の状況を「見える化」することで、漠然とした不安が減り、安心感が生まれます。
まとめ:まずは第一歩を踏み出そう
収入と支出の把握は、賢いお金の使い方や貯蓄を実践するための最も基本的なステップです。最初から完璧を目指す必要はありません。まずは1週間だけでも、使ったお金を記録してみることから始めてみましょう。
家計簿アプリを使ったり、簡単なノートにメモしたり、ご自身にとって無理なく続けられる方法を見つけることが大切です。
この第一歩を踏み出すことで、ご自身のお金に対する意識が変わり、将来に向けた資産形成や、より豊かな生活を送るための土台が築かれるはずです。難しく考えず、できることから始めてみてください。